6.わだち

わだち

轍あらば何も見えずもそこはかと人の気配す土の粒にも
(彩月)

連作(三首)
先人がつくりしみちを歩むごと意識せずとも追う轍かな
轍なきましろな道を進みたし土を固めて草踏みしめて
轍追うごとく歩みし幾年月これより先は自ら拓け
(彩月)


突然の嵐だった。

青々とした草原の海はうねり、
風に悲鳴をあげ、季節が過ぎ行く。

僕は大きくあおられ、
倒れ、
湿り気を帯びた無数の枯葉と共に
わだちの下に埋もれる。

ぬかるみはどこまでも侵食し、
此処までだったのかと自問自答を繰り返す。

しかし、こんな嵐の中を
それでも尚往来する車輪の軋む音を聴きながら、
独りではないことに安堵し目を閉じた。

やがて肉が腐り、
骨となり、大地に還る頃、
嵐は過ぎ去り、
また新たな季節がやって来る。

花は僕の名もなき墓標に咲き乱れ、
蝶は舞い、
鳥は喜び歌い、
空には大きな虹がかかる。
(よる子)

彩月とよる子の気まぐれで出来たことばと写真の出逢いたち。世界のほんとうを探すふたりの旅路。 彩月(すずかぜ彩月) 短歌担当。絵本作家になるための一歩を踏み出したばかり。ペンネームはすずかぜ彩月。パステルとうさぎが大好き。自分を磨き、探究し続けている。 よる子 写真、詩担当。試行錯誤しながらHP作りをしている。難病持ち。寝たきりになる前にやることがたくさんあるのでいつも頭はフル回転。