轍あらば何も見えずもそこはかと人の気配す土の粒にも
(彩月)
連作(三首)
先人がつくりしみちを歩むごと意識せずとも追う轍かな
轍なきましろな道を進みたし土を固めて草踏みしめて
轍追うごとく歩みし幾年月これより先は自ら拓け
(彩月)
突然の嵐だった。
青々とした草原の海はうねり、
風に悲鳴をあげ、季節が過ぎ行く。
僕は大きくあおられ、
倒れ、
湿り気を帯びた無数の枯葉と共に
わだちの下に埋もれる。
ぬかるみはどこまでも侵食し、
此処までだったのかと自問自答を繰り返す。
しかし、こんな嵐の中を
それでも尚往来する車輪の軋む音を聴きながら、
独りではないことに安堵し目を閉じた。
やがて肉が腐り、
骨となり、大地に還る頃、
嵐は過ぎ去り、
また新たな季節がやって来る。
花は僕の名もなき墓標に咲き乱れ、
蝶は舞い、
鳥は喜び歌い、
空には大きな虹がかかる。
(よる子)