38.家路

家路

(彩月)

連作(首)

(彩月)


少女は小高い丘から夜のヴェールがかかる街を見下ろす。
オレンジ色に灯っていく家を数えていた。
ひとつ、またひとつと。

誰かが帰る場所なのだ。
そう思った刹那、また一つ灯る。
滲む夕景。

暗くなれば灯りを灯してきた。
そして今も。
けれど、まるで違う。
あたたかな私が帰る唯一つの場所。

さあ、帰っておいで 昔の私たち。
此処はあたたかくて明るい光に満ちた場所。
あなたたちみんな帰ってくることが出来る灯火の家。

手を広げ少女たちひとりひとりを迎える。
その中に、泣き笑いをしながら家路に向かって走る少女を見た。

丘の上の少女は大人になった。
生きにくさは感じているけれど、今は一人ではないという。
少女は今日も灯りを灯す。
そして、心の灯も消えないように

在り来たりではあるけれど、懸命に生きているという。

(よる子)

彩月とよる子の気まぐれで出来たことばと写真の出逢いたち。世界のほんとうを探すふたりの旅路。 彩月(すずかぜ彩月) 短歌担当。絵本作家になるための一歩を踏み出したばかり。ペンネームはすずかぜ彩月。パステルとうさぎが大好き。自分を磨き、探究し続けている。 よる子 写真、詩担当。試行錯誤しながらHP作りをしている。難病持ち。寝たきりになる前にやることがたくさんあるのでいつも頭はフル回転。