(彩月)
連作(首)
(彩月)
少女は小高い丘から夜のヴェールがかかる街を見下ろす。
オレンジ色に灯っていく家を数えていた。
ひとつ、またひとつと。
誰かが帰る場所なのだ。
そう思った刹那、また一つ灯る。
滲む夕景。
暗くなれば灯りを灯してきた。
そして今も。
けれど、まるで違う。
あたたかな私が帰る唯一つの場所。
さあ、帰っておいで 昔の私たち。
此処はあたたかくて明るい光に満ちた場所。
あなたたちみんな帰ってくることが出来る灯火の家。
手を広げ少女たちひとりひとりを迎える。
その中に、泣き笑いをしながら家路に向かって走る少女を見た。
丘の上の少女は大人になった。
生きにくさは感じているけれど、今は一人ではないという。
少女は今日も灯りを灯す。
そして、心の灯も消えないように
在り来たりではあるけれど、懸命に生きているという。
(よる子)