77.かえろう

かえろう

手を握り胸に抱かれ姿なき子どもが愛に溶けゆく夕べ
(彩月)

連作(首)

(彩月)


甘え方を知らない小さな君。

袖を引っ張る。
髪を引っ張る。
だっこして。
手を繋いで。

抱き上げて、
膝にのせて、
手を繋いで。

またいつでもおいで。
でも、今日はかえろう。
三人一緒に見た夕焼け。
さみしんぼうの君の瞳が滲む、滲む、滲む。

ごめんね。
でも、今日はみんな違う場所にかえろう。

輪郭のはっきりしない君のあたたかな手は、
空気に溶けていくように消えて
まるで何もなかったみたいに。
僕ら二人を遺して。
(よる子)

彩月とよる子の気まぐれで出来たことばと写真の出逢いたち。世界のほんとうを探すふたりの旅路。 彩月(すずかぜ彩月) 短歌担当。絵本作家になるための一歩を踏み出したばかり。ペンネームはすずかぜ彩月。パステルとうさぎが大好き。自分を磨き、探究し続けている。 よる子 写真、詩担当。試行錯誤しながらHP作りをしている。難病持ち。寝たきりになる前にやることがたくさんあるのでいつも頭はフル回転。