79.寄り道

(彩月) 連作(首) (彩月) 出発はいつも少し早く。猫のジロウにおはようさん道端の花を見つけて膨らんだ蕾ににんまりし階段を踊るように駆けていく。 君に会えばあっちに行ったりこっちに行ったり。お茶の約束だったのに、ねぇ私…

78.あまいあまい

人生にちょいと疲れた人たちへ恋し優しき天の甘蜜(彩月) 連作(首) (彩月) あまいあまいまあるい味にかくれたほろ苦キャラメルさがして。あるきつかれたまひるの街角。ほっとひといきこころは空に。(よる子)

77.かえろう

手を握り胸に抱かれ姿なき子どもが愛に溶けゆく夕べ(彩月) 連作(首) (彩月) 甘え方を知らない小さな君。 袖を引っ張る。髪を引っ張る。だっこして。手を繋いで。 抱き上げて、膝にのせて、手を繋いで。 またいつでもおいで。…

76.文句いっぱいな彼女の物語の続き

目覚めての不満文句はお日様の優しさの中溶けて明日へと(彩月) 連作(三首)生きなくていい人なんて誰もいない文句不満も生(せい)あればこそありふれた生でもそこに物語不満文句にささやかな愛光見よ袖擦れ合えば人生の一部になりぬ…

75.距離

(彩月) 連作(首) (彩月) 海と君との距離。花と君との距離。私と君との距離。(よる子)

74.光を探す人

(彩月) 連作(首) (彩月) 生身の身体があるからこそ自由。 思考し、時何かを作り上げ、あなたの手を握る。されど、身体がある故に不自由。 差し当たってはのしかかる重力日々潰れていく骨 頭に巡らぬ血液 酸欠の魚のようにぱ…

73.散花讃歌

(彩月) 連作(首) (彩月) 散花をうらめしく見るのはやめた。讃歌にて見送る。さようなら、また来年。瞬間の美しさを、1日を見せてくれた花たちにこれから巡る季節に讃歌を贈ろう。来年こそ、また会おう。(よる子)

72.沈黙

(彩月) 連作(首) (彩月) 何処とも解らぬ深みにて貴方は再び沈黙す。それとも私が耳を塞いだか。彼は誰時。 正しきことを見る目を聞くまじきことを聞かぬ強さを与え給え。惑わされず踊らされず痛みを鋼の盾とし我が沈黙を矛とせ…

71.彼女たちの冒険譚

(彩月) 連作(首) (彩月) 小さな二人の世界で初めてのいってらっしゃい、いってきます。行かせたくないよ、行きたくないよ。ただいま、お待たせ。おかえり、抱っこして。おかえり、抱きしめさせて。ただいま、離れたくない。 こ…

70.おはよう

(彩月) 連作(首) (彩月) あなたが私に最初にかけた一言は特別な言葉なんかではなかった。ただ、「おはよう」と。ただし、愛を込めて。朝靄の中、山脈の岩はあなたのおはように呼応するかのように光り輝く。(よる子)